看護理工学会誌 9巻
原著
英語論文
Establishment of an infected wound model by bacterial inoculation on wound surface in rats(創表面への細菌接種によるラット創感染モデルの確立)
創表面への細菌接種によるラット創感染モデルの確立
著者
北村 言1 仲上豪二朗1, 2 峰松健夫2, 3 國光真生1, 4 真田弘美1, 2
所属
- 東京大学医学系研究科老年看護学/創傷看護学分野
- 東京大学医学系研究科グローバルナーシングリサーチセンター
- 東京大学医学系研究科社会連携講座スキンケアサイエンス
- 日本学術振興会特別研究員(DC)
要旨
本研究は,創表面への細菌接種によるラット創感染モデルの作成を目的とした.雄性SDラット(6ヵ月齢)の背部に直径2cmの全層欠損創を作製した.創作製翌日,緑膿菌(PAO1)懸濁液(OD600=1.0)に浸漬し37℃で1.5時間静置培養した滅菌ガーゼを創面に72時間貼付した.対照群には滅菌培地に浸漬したガーゼを創面に貼付した.創作製6日後に創部組織を採取した.感染群では,創作製6日後に,創周囲皮膚に発赤を認めた.細菌ガーゼ塗布前の創面積を1とした相対面積は,対照群にくらべ感染群で有意に大きかった(0.8±0.1 vs 0.6±0.1,p=0.011).ミエロペルオキシダーゼは,対照群にくらべ感染群で多く認められた.免疫組織化学では,感染群で緑膿菌が創部組織内に検出された.以上より,臨床における感染創傷を模したモデルと言える.キーメッセージ
- 今回の研究は看護・介護のどのような問題をテーマにしているのか?研究を行うきっかけとなったことはどのようなことか?
仙骨部や尾骨部に好発する褥瘡では,創部が排泄物で汚染され感染を引き起こすことがある.本研究は,創面への細菌の接触により感染を惹起させたラット創傷感染モデルを確立した. - この研究成果が看護・介護にどのように貢献できるのか?あるいは,将来的に貢献できることは何か?
本研究では,従来の感染モデルで用いられている創部への細菌液の注射や免疫抑制など創傷治癒を阻害しうる方法を用いずに,創面への細菌の接触というシンプルな方法で壊死組織を伴う感染創を作成した.本モデルは,創傷感染に対する治療・ケアの効果の検証に用いることが可能であり,創傷管理の研究に貢献しうる. - 今後どのような技術が必要になるのか?
本モデルを用いて,新たな創傷ケアやドレッシング材の評価研究を行う.
キーワード
細菌,感染,創傷モデル,緑膿菌Establishment of an infected wound model by bacterial inoculation on wound surface in rats
Author(s)
Aya Kitamura1 Gojiro Nakagami1, 2 Takeo Minematsu2, 3 Mao Kunimitsu1, 4 Hiromi Sanada1, 2
Affiliation
- Department of Gerontological Nursing/Wound Care Management, Graduate School of Medicine, The University of Tokyo
- Global Nursing Research Center, Graduate School of Medicine, The University of Tokyo
- Department of Skincare Science, Graduate School of Medicine, The University of Tokyo
- Japan Society for the Promotion of Science
Abstract
This study aimed to develop a new infected wound model caused by bacterial inoculation on wound surface in rats. A full-thickness wound was created on the dorsal skin of six-month-old male Sprague-Dawley rats. A piece of gauze was incubated with bacterial solution (a wild-type strain of Pseudomonas aeruginosa, OD600=1.0) for 1.5 h prior to application, for 72 h onto the wound surface on post-wounding day 1. A piece of gauze was incubated without bacteria for control group. The wound tissue was collected on post-wounding day 6. Macroscopic observation showed erythema in the periwound skin in the infection group on post-wounding day 6. The relative wound area to the baseline value of the infection group was significantly larger than that of the control group on post-wounding day 6 (0.8±0.1 vs 0.6±0.1, p=0.011). Myeloperoxidase was abundant in the infection group compared with the control group. P. aeruginosa was detected inside the wounds in the infected group via immunohistochemistry. Our new infected wound model can mimic a clinical cutaneous infected wound.Keyword
bacteria, infection, Pseudomonas aeruginosa, wound model英語論文
An analysis of the locations visited by night shift midwives and the duration spent in each while providing round-the-clock critical care to high-risk mothers in a maternity ward(24時間体制でハイリスクの母体救命救急に対応している産科単独の病棟における夜勤帯助産師の滞在場所と滞在時間の分析)
24時間体制でハイリスクの母体救命救急に対応している産科単独の病棟における夜勤帯助産師の滞在場所と滞在時間の分析
著者
西川 美樹1 齋藤 いずみ1 大滝 千文2 大澤 佳代3 和泉 慎太郎4
所属
- 神戸大学大学院保健学研究科看護学領域
- 神戸大学大学院保健学研究科
- 神戸常磐大学保健科学部医療検査学科
- 神戸大学大学院システム情報学研究科
要旨
日本では,分娩の約8割がほかの診療科が混合する病棟で行われており,分娩と他科死亡患者の看護が重複するといった実態が明らかにされてきた.また,産科単独病棟でもその68.2%がハイリスク化しており出産環境の安全性の低下が危惧されている.よって本研究は24時間体制でハイリスクの母体救命救急に対応している産科単独病棟の看護の実態を可視化することで周産期医療体制の在り方を検討することを目標とした.ビーコンとスマートフォンを活用し,助産師の滞在場所と滞在時間を明らかにした.通常業務以外の突発的な事象が生じると母児の救命に向けて分娩エリアに半数以上の助産師が配置されていたが,「病室」「新生児室」の滞在時間を減らさずにクライアントに必要なケアを提供していた.そこにはチームメンバー間の協働による成果と,調査施設が周産期のケアに専念できる産科単独病棟であったことが関与していたと考えられる.キーメッセージ
- 今回の研究は看護・介護のどのような問題をテーマにしているのか?研究を行うきっかけとなったことはどのようなことか?
24時間体制で母体救命救急に対応している施設の看護の実態を明らかにすることをテーマとしている. - この研究成果が看護・介護にどのように貢献できるのか?あるいは,将来的に貢献できることは何か?
現在,助産師の人員配置は法的にも明文化されていない.本研究の成果はその基礎データとして貢献できればと考えている. - 今後どのような技術が必要になるのか?
研究協力者の負担にならず,かつ患者のプライバシー確保の両側面が遵守される測定方法の検討が必要と考える.
キーワード
産科単独病棟,夜勤帯シフト,情報通信機器,タイムスタディ,助産師人員配置An analysis of the locations visited by night shift midwives and the duration spent in each while providing round-the-clock critical care to high-risk mothers in a maternity ward
Author(s)
Miki Nishikawa1 Izumi Saito1 Chifumi Otaki2 Kayo Osawa3 Shintaro Izumi4
Affiliation
- Department of Nursing, Kobe University Graduate School of Health Science
- Kobe University Graduate School of Health Science
- Department of Health Science, Kobe Tokiwa University
- Kobe University Graduate School of System Informatics
Abstract
In Japan, about 80% deliveries occur in a ward shared by Obstetrics and other departments, and studies have revealed that nurses have overlapping duties in assisting with delivery and caring for dying patients from other departments. Moreover, 68.2% of deliveries in the maternity ward are high risk, so there are concerns about the safety of the delivery environment. Thus, the current study sought to ascertain the realities of care in a maternity ward providing round-the-clock critical care to high-risk mothers. This study also sought to examine the nature of perinatal care. This study used beacons and smartphones to reveal the locations visited by midwives and the duration spent in each. When sudden events occurred, over half of the midwives were assigned to delivery areas to ensure the survival of the mother and infant, and they provided patients with needed care without reducing the duration of time they spent in patient rooms and neonatal rooms. The outcomes of collaboration among members of the care team were associated with the fact that this study was conducted at a facility dedicated to perinatal care.Keyword
maternity ward,night shift,information and communication devices,time and motion study,midwife staffing訪問看護師が撮影した直腸エコー動画に対するAIによる便貯留評価手法の考案
訪問看護師が撮影した直腸エコー動画に対するAIによる便貯留評価手法の考案
著者
松本 勝1 石橋 昂大2 北村 言3 玉井 奈緒1, 4 三浦 由佳1 高橋 聡明3 東村 志保3 仲上 豪二朗3, 4 真田 弘美3, 4
所属
- 東京大学大学院医学系研究科社会連携講座イメージング看護学
- 東京大学医学部健康総合科学科
- 東京大学大学院医学系研究科老年看護学/創傷看護学分野
- 東京大学大学院医学系研究科附属グローバルナーシングリサーチセンター
要旨
訪問看護師が撮影した直腸エコー動画を用いて,既存のArtificial Intelligenceに基づく読影支援アプリケーションによる便貯留評価をより高い精度で行うことのできる手法の考案を目的とした.訪問看護ステーション1施設の診療記録を対象とし,撮影された直腸エコー動画から静止画を出力した.各静止画に対し,エコーのエキスパートによる読影,および直腸便貯留を示す高エコー域を抽出しカラー表示するアプリケーションによる便貯留の有無の判定を行った.前者を正解とし,アプリケーションの判定精度を評価した.アプリケーションの判定で偽陽性であった画像において,直腸以外の便やガスの貯留と区別するために抽出領域の深度が体表面から50mm未満であった画像,さらに,便貯留以外の高エコー域と区別するために長径が14.5mm未満となる抽出領域を除外したところ,感度81.1%,特異度87.8%,正解率83.7であった.アプリケーションの判定精度を高めるための手段として,抽出領域の深度および長径を調整する手法が考案された.キーメッセージ
- 今回の研究は看護・介護のどのような問題をテーマにしているのか?研究を行うきっかけとなったことはどのようなことか?
訪問看護では便秘,具体的には大腸便貯留のアセスメントに難渋しており,超音波検査(エコー)による便の可視化が有用である.先行研究より,便秘をアセスメントするうえでは特に直腸の観察が重要であることが明らかになっている.エコーの撮影技術は教育プログラムで解決できるものの,画像の読影のむずかしさに対する解決策は立っていなかったため,今回の研究に着手した. - この研究成果が看護・介護にどのように貢献できるのか?あるいは,将来的に貢献できることは何か?
簡便で迅速・正確な大腸便貯留観察と便秘のアセスメントにつながる.看護師だけでなく将来的には介護職,家族,患者など,誰もが便秘の評価に使えるような技術になることが期待される. - 今後どのような技術が必要になるのか?
現時点ではパソコンあるいはスマーフォン上で起動するアプリケーションのため,今回の研究のような機能を搭載した携帯型エコー装置が開発されることが期待される.
キーワード
訪問看護,超音波検査(エコー),人工知能,便秘Development of AI-based fecal retention assessment method for rectal ultrasonography videos taken by home-visit nurses
Author(s)
Masaru Matsumoto1 Kousuke Ishibashi2 Aya Kitamura3 Nao Tamai1, 4 Yuka Miura1 Toshiaki Takahashi3 Shiho Higashimura3 Gojiro Nakagami3, 4 Hiromi Sanada3, 4
Affiliation
- Department of Imaging Nursing Science, Graduate School of Medicine, The University of Tokyo
- School of Integrated Health Sciences, Faculty of Medicine, The University of Tokyo
- Department of Gerontological Nursing/Wound Care Management, Graduate School of Medicine, The University of Tokyo
- Global Nursing Research Center, Graduate School of Medicine, The University of Tokyo
Abstract
The purpose of this study was to develop a method for more accurate evaluation of fecal retention by an artificial intelligence interpretation support application that determines and displays in red extraction area the presence of fecal retention for rectal ultrasonographic videos taken by home-visiting nurses. In this study, static images were output from rectal ultrasonographic videos taken from medical records of one home-care nursing station. For each static image, the ultrasound expert and the application judged the presence of fecal retention based on half-moon or crescent-shaped hyperechoic findings as extraction area. This study focused on images that were false-positive results for the application when the ultrasound expert’s answer was correct. Extracted regions with a depth of less than 50 mm and a longitudinal diameter of less than 14.5 mm were excluded to distinguish them from stool and gas retentions outside the rectum. As a result, the sensitivity was 81.1%, specificity 87.8%, and correct rate 83.7%. A method of adjusting the depth and long diameter of the extraction area was developed as a means for improving the judgement accuracy of the application.Keyword
home-visit nursing, ultrasonography, artificial intelligence, constipation看護学生を対象とした課題遂行時の脳波に及ぼすマインドフルネスの影響:ランダム化比較試験
看護学生を対象とした課題遂行時の脳波に及ぼすマインドフルネスの影響:ランダム化比較試験
著者
藤後 栄一1, 2 山本 祐輔2 村松 歩2 水野(松本)由子2, 3
所属
- 兵庫大学看護学部看護学科
- 兵庫県立大学大学院応用情報科学研究科
- 兵庫県立大学大学院情報科学研究科
要旨
本研究では,看護学生を対象にマインドフルネス呼吸法を適用した群と適用していない群に分類し,マインドフルネスの影響を生理学的観点から調べた.被験者(20名)を無作為に2群に分類し,5日間におけるマインドフルネスを適用した群と,適用しなかった群の課題遂行時の脳波を測定した.解析箇所は両群のタスク間のθ波,α波,β波とし,各周波数帯域のパワースペクトル値含有量を比較した.その結果,マインドフルネスによって,課題遂行中にリラクゼーション効果があること,課題遂行後も注意力を維持することが示唆された.マインドフルネス群の被験者全員が実験期間の5日間継続してマインドフルネスを実践することで,リラクゼーション効果が持続し,緊張が緩和された状況でマインドフルネスを行わない場合でも,リラクゼーション効果が持続した.これらのことから,マインドフルネスは課題遂行やリラクゼーションに有用であることが示唆された.キーメッセージ
- 今回の研究は看護・介護のどのような問題をテーマにしているのか?
研究を行うきっかけとなったことはどのようなことか?
テーマは看護学生のメンタルヘルス改善であり,看護基礎教育の教育課程の過密がきっかけである. - この研究成果が看護・介護にどのように貢献できるのか?あるいは,将来的に貢献できることは何か?
学習面・精神面のつまずきに対する予防や看護学に対するストレスの軽減に貢献できる. - 今後どのような技術が必要になるのか?
マインドフルネスを誰でも活用できるようにするためのプログラム開発と普及啓発が必要となる.
キーワード
看護学生,課題遂行,ランダム化比較試験,マインドフルネス,脳波Effects of mindfulness on EEG during task performance among nursing students: A randomized controlled trial
Author(s)
Eiichi Togo1, 2 Yusuke Yamamoto2 Ayumi Muramatsu2 Yuko Mizuno-Matsumoto2, 3
Affiliation
- Department of Nursing, Faculty of Nursing, Hyogo University
- Graduate School of Applied Informatics, University of Hyogo
- Graduate School of Information Science, University of Hyogo
Abstract
In this study, nursing students were classified into two groups and the effects of mindfulness were investigated from a physiological perspective. The subjects (20 people) were randomly divided into two groups, and EEG was measured during the task in the group that applied mindfulness and the group that did not apply mindfulness during 5 days. The analysis points were theta, alpha, and beta waves during the task in both groups, and the power spectrum values of each frequency band were compared. The results suggested that mindfulness had a relaxation effect during the task and maintained attention after the task was completed. All the subjects in the mindfulness group practiced mindfulness continuously for five days during the experimental period, and the relaxation effect was sustained even when they did not practice mindfulness in a situation of reduced tension. These results suggest that mindfulness is useful for task performance and relaxation.Keyword
nursing students, task performance, randomized controlled trial, mindfulness, EEG看護師によるマスク換気時のヘッドバンド使用が換気量およびマスクフィット圧力分布に与える影響
看護師によるマスク換気時のヘッドバンド使用が換気量およびマスクフィット圧力分布に与える影響
著者
大澤 翔1 福田 真佑1 赤瀬 智子1
所属
- 横浜市立大学大学院医学研究科看護学専攻周麻酔期看護学分野
要旨
看護師によるマスク換気にヘッドバンド(HB)を使用することの有効性を,換気量とマスクフィット圧力分布に着目し検証することを目的とした.看護師40名を対象としてクロスオーバー法で調査を行った.対象者は気道シミュレータに従来用いられているE-Cクランプ法(親指と人差し指でマスクを保持し残りの指で下顎を挙上する方法,以下C法)と,C法に加えてHBを使用する方法(以下H法)でのマスクフィットを行った.換気量に加え,圧力測定シートを用いてマスクフィットの圧力分布を測定した.結果,換気量はH法のほうが有意に増加した.圧力値は,鼻部,右頬部,右口角部,左口角部でH法が有意に高く,加圧面積は顎部以外のすべての部位でH法が有意に高かった.さらに,C法とH法の最大換気量の差には右口角部の加圧面積の差が最も影響していた.これらのことから,看護師によるマスク換気にHBを使用することで,E-Cクランプ法よりも右口角部がカバーされ,換気量が増加する可能性が示唆された.キーメッセージ
- 今回の研究は看護・介護のどのような問題をテーマにしているのか?
院内急変などの緊急処置時に看護師が行う呼吸管理技術としてマスク換気があるが,マスク換気を行う際に適切なマスクフィットが行えないことによるエアリークが問題となる. - 研究を行うきっかけとなったことはどのようなことか?
周麻酔期看護師として麻酔管理に携わるなかで,効果的にマスクフィットが行えなかった経験が本研究を行うきっかけとなった.テーマは看護学生のメンタルヘルス改善であり,看護基礎教育の教育課程の過密がきっかけである. - この研究成果が看護・介護にどのように貢献できるのか?あるいは,将来的に貢献できることは何か?
看護師による適確なマスク換気技術のための基礎的資料となる.将来的には安全かつ効果的なマスク換気技術実施のためのデバイス開発に繋げたい. - 今後どのような技術が必要になるのか?
マスクフィットの圧力分布を時間軸に沿って測定できる機器が必要である.これにより,より簡便かつ適切なマスクフィットを補助できるヘッドバンドの発展形を提案したい.
キーワード
マスク換気,看護師,ヘッドバンド,マスクフィット,圧力分布Effects of a headband on mask ventilation volume and mask fit pressure distribution: A randomized crossover trial
Author(s)
Sho Osawa1 Mayu Fukuda1 Tomoko Akase1
Affiliation
- Department of Perianesthesia Nursing, Graduate School of Medicine, Yokohama City University
Abstract
The aim of this study was to examine the effectiveness of headband (HB) usage for nurses to mask ventilation. This study was a randomized crossover trial focusing on ventilation volume and mask fit pressure distribution. Forty nurses participated in this study. Subjects performed a mask fit using the C method (E-C usage method only) and H method (E-C usage method with HB) on the airway simulator. In addition to the ventilation volume, we measured the mask’s pressure distribution using a pressure measurement sheet. Ventilation volume was significantly higher with the H method than the C method. Pressure was significantly higher on the nose, right cheek and both corners of the mouth with the H method. Furthermore, the pressurized area was significantly higher at all sites except the jaw using the H method. The difference in maximum ventilation volumes between the C and H methods was most affected by the difference in the pressurized area at the right corner of the mouth. These results suggested that nurses’ HB use for mask ventilation could increase ventilation volume by covering a mask fit ventilation on the right corner of the mouth compared with the E-C method.Keyword
mask ventilation, nurse, headband, mask fit, pressure distribution微酸性電解水の1週間反復噴霧がヒト皮膚に与える影響−二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験−
微酸性電解水の1週間反復噴霧がヒト皮膚に与える影響 -二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験-
著者
樋口 幸1 巻野 雄介2 田中 佳子1 大貝 和裕3
所属
- 大分県立看護科学大学看護学部
- 日本赤十字豊田看護大学看護学部
- 金沢大学医薬保健研究域附属AIホスピタル・マクロシグナルダイナミクス研究開発センター
要旨
2002年に食品添加物として認可された微酸性電解水は,従来の消毒剤の代替として感染防止対策への活用が期待されているが,ヒトの皮膚への影響の検証は十分ではない.本研究では,微酸性電解水をヒトの皮膚に1日1回1週間使用した場合,蒸留水と比較して有害かどうかを検証した.20~50歳台の男女20名を対象に,左右どちらか一方の前腕に微酸性電解水,他方には蒸留水を1日1回噴霧した.介入期間の前後で角質水分量,油分量,経皮水分蒸散量,pH,常在細菌叢の分布,角層バイオマーカーを評価し蒸留水と比較した.その結果,皮膚常在菌数(16SリボソームRNA数)が蒸留水の使用によって有意に減少していたことをのぞき,すべての調査項目において,微酸性電解水は蒸留水と比較して統計的有意差はなく,有害事象も認められなかった.以上から,微酸性電解水はヒトの皮膚への有害性を認めず,安全にヒトの皮膚に噴霧できる可能性が示唆された.キーメッセージ
- 今回の研究は看護・介護のどのような問題をテーマにしているのか?
研究を行うきっかけとなったことはどのようなことか?
感染予防のために手洗いと消毒が当たり前に行われるようになったが,手荒れの悪化に悩む声を聞く機会も増えた.そこで,食品の衛生管理に広く使用されている微酸性電解水活用の可能性について検討すべく,ヒト皮膚への影響について検証実験を試みた. - この研究成果が看護・介護にどのように貢献できるのか?あるいは,将来的に貢献できることは何か?
将来,人体や環境に安心・安全な消毒法の1つとして,感染予防ならびに衛生管理に貢献できる. - 今後どのような技術が必要になるのか?
使用部位や用途に応じた適正な使用方法や安全性の検証が必要である.
キーワード
微酸性電解水,ヒト,皮膚,二重盲検,対照並行群間比較試験Effect of repeated spraying of slightly acidic electrolyzed water for one week on human skin: A placebo-controlled,double blind, parallel-group comparative study
Author(s)
Sachi Higuchi1 Makino Yusuke2 Keiko Tanaka1 Kazuhiro Ogai3
Affiliation
- School of Nursing, Oita University of Nursing and Health Sciences
- School of Nursing, Japanese Red Cross Toyota College of Nursing
- AI Hospital/Macro Signal Dynamics Research and Development Center, Kanazawa University
Abstract
After being permitted as a food additive in 2002, slightly acidic electrolyzed water (SAEW) was expected to be a low-irritant disinfectant. However, its safety when applied on human skin has not yet been confirmed. This study aimed to identify the toxicity of SAEW for human skin. This double-blind, placebo-controlled trial included 20 subjects ranging in age from 20 to 50 years who had normal skin on their forearms at the time of study entry. Two spray bottles, A and B, containing SAEW or distilled water (DW), were distributed to all subjects. The reagents were randomly assigned so that neither the subjects nor the researchers knew which container, A or B, contained the SAEW or DW. The subjects applied a single spray (approx. 2 mL) of A and B to their left and right forearms, respectively, once daily for one week as the intervention period. The subjects were instructed not to touch or rub the sprayed areas of their forearms until the reagent had dried. To assess the resultant skin condition, stratum corneum hydration, sebum secretion, transepidermal water loss, skin pH, resident flora, and multiple biomarker assay of tape-stripped stratum corneum from the site of the forearm where the spray was applied were evaluated before and after the intervention period. The results showed that there were no differences between the skin sprayed with SAEW and DW both before and after the intervention period. In addition, SAEW did not induce any skin irritation. Our findings suggested that SAEW can be safely applied on human skin.Keyword
slightly acidic electrolytic water, human, skin, double-blind, parallel-group comparative studyL*a*b*色空間のパラメータに基づく発赤の肉眼的所見に対応した客観的評価尺度の提案
L*a*b*色空間のパラメータに基づく発赤の肉眼的所見に対応した客観的評価尺度の提案
著者
亀田 昌志1 大﨑 真2 高橋 亮3 武田 利明3
所属
- 岩手県立大学ソフトウェア情報学部
- 東北文化学園大学医療福祉学部看護学科
- 岩手県立大学看護学部
要旨
静脈炎発症後に生じる発赤の変化については,看護師らにより主観的に評価されるのが通常であり,これは肉眼的所見と呼ばれている.このとき,発赤に対する唯一の評価である肉眼的所見で正しい結果を得るためには,複数人での評価が必要となる.主観的評価における人的負荷を軽減するために,肉眼的所見と同一の評価を行うことができる客観評価尺度が望まれている.本論文では,発赤の時間的変化を伴う撮影画像から抽出した輝度の変化と色の変化を表すL*a*b*色空間のパラメータを用いて,発赤の進行および回復に影響を受けるヒストグラムの形状変化に対応する特徴量を各パラメータの第1四分位数に基づいて定義する.その後,程度の異なる複数の症例を用いることで,定義された特徴量に基づいて,発赤の段階的な変化を判定するための客観的評価尺度を提案する.キーメッセージ
- 今回の研究は看護・介護のどのような問題をテーマにしているのか?
研究を行うきっかけとなったことはどのようなことか?
炎症所見の1つである発赤の進行や回復に対しては,現状は主観による評価が行われており,評価者に依存しない定量的な客観評価を行うことが求められているため. - この研究成果が看護・介護にどのように貢献できるのか?あるいは,将来的に貢献できることは何か?
提案手法により得られる客観評価の結果が,看護の現場で評価を行う際に1つの指標になることに加え,見落としや見誤りなどのヒューマンエラーを防止する効果があると考えられる. - 今後どのような技術が必要になるのか?
局所的に生じた発赤に対しても適切な評価が行えることと,発赤を評価するだけでなく,潰瘍化を含めてその進行を予測できるような検出機能を追加したいと考えている.
キーワード
静脈炎,発赤,肉眼的所見,L*a*b*色空間,ヒストグラムObjective assessment measure for inflammatory reactions in infusion phlebitis based on combination of parameters in L*a*b* color space
Author(s)
Masashi Kameda1 Makoto Osaki2 Ryo Takahashi3 Toshiaki Takeda3
Affiliation
- Faculty of Software and Information Science, Iwate Prefectural University
- Department of Nursing, Faculty of Medical Science and Welfare, Tohoku Bunka Gakuen University
- Faculty of Nursing, Iwate Prefectural University
Abstract
Generally inflammatory reactions induced by infusion phlebitis are assessed subjectively as a part of nursing care which is known as macroscopic findings. For achieving accurate inference from this method of subjective assessment, multiple checks by multiple persons are needed. In order to reduce the human workload of subjective evaluation, an objective assessment measure for the inflammatory reactions induced by infusion phlebitis is necessary. In this work, the first quartiles of each of the two parameters of the L*a*b* color space that represent the changes in brightness and color respectively, from the captured images of inflammatory reactions over a period of time, are used to define the features corresponding to the amount of shape change of histogram over time representing the progress or recovery of the inflammatory reaction. Next, by using multiple cases of different degrees of inflammatory reaction, an objective assessment measure based on the above definition has been proposed. It is seen in the experimental results that the proposed objective measure can assess the inflammatory reactions correctly in accordance to the results obtained by the subjective assessment.Keyword
infusion phlebitis, inflammatory reaction, subjective assessment, L*a*b* color space, histogram英語論文
Effects of the presence of parturient women on the length of time that nurses and midwives spend in the rooms of other patients during a night shift in a mixed obstetric ward(産科混合病棟の夜勤帯における産婦の存在が産婦以外の患者の病室に看護師・助産師が滞在する時間に及ぼす影響
産科混合病棟の夜勤帯における産婦の存在が産婦以外の患者の病室に看護師・助産師が滞在する時間に及ぼす影響
著者
寺岡 歩1 齋藤 いずみ2 和泉 慎太郎3 大滝 千文2, 4 西川 美樹1 大澤 佳代5
所属
- 神戸大学大学院保健学研究科博士課程後期課程
- 神戸大学大学院保健学研究科
- 神戸大学大学院システム情報学研究科
- 京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻
- 神戸常盤大学医療検査学科
要旨
産科混合病棟では,人員の少ない夜勤帯に産婦に対応することによって産婦以外の患者に充てる時間が減少しないかという懸念がある.本研究の目的は,産科混合病棟の夜勤帯における産婦の存在が,産婦以外の患者の病室に看護師・助産師が滞在する時間に及ぼす影響を明らかにすることである.無線通信装置を用いて看護師・助産師の滞在場所と滞在時間を測定し,産婦なし7夜勤と産婦あり5夜勤の滞在時間の中央値を比較した.産婦あり群で助産師は分娩エリア滞在時間が有意に増加しており,看護師の滞在時間は有意に産科4床室が増加し休憩エリアが減少していた.産婦以外の患者の病室に滞在する時間は,看護師・助産師ともに産婦の有無で有意な差はなかった.夜勤帯に産婦が存在していても,産婦にかかわる助産師に代わって看護師が褥婦にかかわる協働が行われ,休憩が減少しても看護師・助産師による産婦以外の患者の病室での滞在時間に有意な減少は認められなかった.キーメッセージ
- 今回の研究は看護・介護のどのような問題をテーマにしているのか?
産科を含む複数診療科の患者が入院する病棟での看護師・助産師の動きを明らかにする. - 研究を行うきっかけとなったことはどのようなことか?
人員の少ない夜勤帯に産婦への看護と産婦以外の患者への看護が重なると互いの看護時間に影響があるのではないかという懸念. - この研究が看護・介護にどのように貢献できるのか?あるいは,将来的に貢献できることは何か?
産科混合病棟の看護を維持するために必要な看護師・助産師の人員配置の資料となる. - 今後どのような技術が必要になるのか? 連続して長期間,看護師・助産師全員の看護行為と時間を自動で計測できる装置を作る技術.
キーワード
産科混合病棟,夜勤帯,位置情報,滞在時間,産婦Effects of the presence of parturient women on the length of time that nurses and midwives spend in the rooms of other patients during a night shift in a mixed obstetric ward
Author(s)
Ayumi Teraoka1 Izumi Saito2 Shintaro Izumi3 Chifumi Otaki2, 4 Miki Nishikawa1 Kayo Osawa5
Affiliation
- Doctoral Program, Graduate School of Health Sciences, Kobe University
- Graduate School of Health Sciences, Kobe University
- Graduate School of System Informatics, Kobe University
- Department of Human Health Sciences, Graduate School of Medicine, Kyoto University
- Department of Medical Laboratory Science, Faculty of Health Sciences, Kobe Tokiwa University
Abstract
Due to the small number of staff working night shifts in hospitals, there are concerns about whether the time spent caring for parturient women decreases the availability of care for other patients. This study aimed to investigate how the presence of parturient women influences the length of time that nurses and midwives spend in other patients’ rooms during a night shift in a mixed obstetric ward. The location and length of stay were measured using a wireless communication device, and the median length of stay in the 5-night shifts in the presence of parturient women were compared with that of the 7- night shifts in the absence of parturient women. The results revealed that when parturient women were present in the ward, midwives showed a significant increase in the length of stay in the delivery area, while nurses showed a significant increase in the length of stay in the obstetric 4-bed rooms, and a significant decrease in the rest area. Even when parturient women were present during the night shift in a mixed obstetric ward, a significant reduction was not observed in the length of stay in other patients’ rooms due to the collaboration of nurses and midwives.Keyword
mixed obstetric ward, night shift, location information, length of stay, parturient woman英語論文
Distinction between women with premenstrual syndrome or premenstrual dysphoric disorder and healthy women based on clustering Profile of Mood States 2nd Edition scores in the follicular phase(卵胞期における日本語版総合的気分尺度2nd Edition(POMS®2) 得点による類型化を利用した月経前症候群もしくは月経前不快気分障害とnon-PMSの判別)
卵胞期における日本語版総合的気分尺度2nd Edition(POMS〓2)得点による類型化を利用した月経前症候群もしくは月経前不快気分障害とnon-PMSの判別
著者
青木 真希子1, 2 星野 美春3 鈴木 雅登4 岡山 久代5
所属
- 神奈川工科大学健康医療科学部
- 筑波大学大学院人間総合研究科学研究群
- 順天堂大学医学部附属順天堂医院看護部
- 兵庫県立大学大学院理学研究科
- 筑波大学医学医療系
要旨
多くの成人女性は,月経前症候群(PMS)や月経前不快気分障害(PMDD)を経験する.PMSやPMDDの症状は多岐にわたり,正確な診断はむずかしい.本研究では,Profile of Mood States 2nd Edition短縮版(POMS〓2)を用いて,健常女性とPMSもしくはPMDDの判別を目的とした.対象は,20~22歳の女性(PMDD群3名,PMS群5名,non-PMS群11名)である.POMS〓2の得点に対してWard法によるCluster分析を行った.卵胞期では2つのClusterがみられた.Cluster1に分類された被験者は9人のNon-PMSで構成され,「友好」と「活気-活力」において高得点であった.一方,Cluster2はPMSまたはPMDDを有するすべての被験者と,軽度のPMSの可能性がある2人のNon-PMSで構成された.Cluster1は9名のnon-PMS群,Cluster2はすべてのPMS群とPMDD群から構成された.黄体期でも2つのClusterがみられたが,両Clusterにもnon-PMS群が存在した.以上より卵胞期のPOMS〓2の得点から健常女性とPMSもしくはPMDDの判別の可能性が示唆された.キーメッセージ
- 今回の研究は看護・介護のどのような問題をテーマにしているのか?
多くの女性が抱える月経前症候群(PMS)の正確な診断方法の構築をテーマにしている.PMSの診断方法は主観的評価のみでありむずかしく,正確な診断,適切な対処へ繋げていきたいと考えたのがきっかけである. - この研究が看護・介護にどのように貢献できるのか?あるいは,将来的に貢献できることは何か?
本研究により,PMSに悩む女性への診断と対処に繋がり,女性の健康へ寄与することができる. - 今後どのような技術が必要になるのか?
多岐にわたるPMSの症状を複合評価するためのAI技術.
キーワード
PMS,POMS〓2,PMDD,Cluster分析Distinction between women with premenstrual syndrome or premenstrual dysphoric disorder and healthy women based on clustering Profile of Mood States 2nd Edition scores in the follicular phase
Author(s)
Makiko Aoki1, 2 Miharu Hoshino3 Masato Suzuki4 Hisayo Okayama5
Affiliation
- Faculty of Health and Medical Sciences, Kanagawa Institute of Technology
- Graduate School of Comprehensive Human Sciences, University of Tsukuba
- Department of Nursing, Juntendo University Hospital
- Graduate School of Science, University of Hyogo
- Faculty of Medicine, University of Tsukuba
Abstract
Many adult women complain of symptoms of premenstrual syndrome (PMS) and premenstrual dysphoric disorder (PMDD). An accurate distinction between women with PMS or PMDD and healthy women is difficult because their symptoms vary and range from physical to mental symptoms. This study aimed to develop a method for the distinction between subjects with PMDD or PMS and healthy women based on clustering the Profile of Mood States 2nd Edition (POMS〓2) scores. Nineteen adult women aged 20〓22 years (three PMDD subjects, five PMS subjects, 11 non-PMS subjects) were included in this study. The abridged Japanese version of POMS〓2 was administered to the subjects during their follicular and luteal phases. All subjects were clustered based on the scores on the subscales of the POMS〓2 analysed by the ward method. In the follicular phase, the subjects were divided into two clusters. The subjects classified into cluster 1, which consisted of 9 non-PMS, had higher scores in Friendliness and Vigor-Activity. In contrast, cluster 2 consisted of all subjects with PMS or PMDD and two non-PMS women who seem to have mild PMS. A method based on scores of POMS〓2 in the follicular phase has been proposed as a way to distinguish between women with PMS or PMDD and healthy women.Keyword
premenstrual syndrome, POMS〓2, premenstrual dysphoric disorder, cluster analysis血液透析患者の針穿刺痛軽減用冷却パッドの前腕皮膚冷却効果の検証
血液透析患者の針穿刺痛軽減用冷却パッドの前腕皮膚冷却効果の検証
著者
苗村 潔1
所属
- 東京工科大学医療保健学部臨床工学科
要旨
血液透析患者の身体的ストレスとなっている針穿刺痛を軽減するために,穿刺部位を冷却するパッドを試作し,熱伝導率が皮膚に近いポリエチレン板上と健常成人8名の左前腕上で評価した.冷却パッドは,直径1mm以下の粒状尿素または粉末状尿素をコットンシート袋に入れた.シリンジとリニアアクチュエータを用い,0.5mL/sの一定速度で水を滴下した.冷却効果の個人差を考察するため,冷却パッドを貼付した位置の皮静脈までの皮下組織厚を超音波画像診断装置で測定した.皮膚温25℃以下を穿刺痛軽減の目安として,25℃以下に下がるまでの時間と,25℃以下を持続する時間の平均値を比較した.25℃以下に下がるまでに,粉末状尿素が7s,粒状尿素は17s要した.持続時間は390s以上であった.皮静脈までの皮下組織厚から算出した温度勾配は熱流束と正の相関(r2=0.84)が,初期の皮膚温は25℃以下を持続する時間と負の相関(r2=0.62)が高かった.キーメッセージ
- 今回の研究は看護・介護のどのような問題をテーマにしているのか?
透析看護でバスキュラーアクセスへ穿刺する際に生じる穿刺痛を軽減する方法.臨床工学科で臨床実習後の学生も研究の必要性を感じていて,ニーズが明確なため. - この研究が看護・介護にどのように貢献できるのか?あるいは,将来的に貢献できることは何か?
穿刺痛の軽減は患者および穿刺する看護師,臨床工学技士のストレスを低減することが可能になる. - 今後どのような技術が必要になるのか?
水と尿素を1つのパッケージに収め,安価に大量生産するための技術.
キーワード
血液透析,冷却,熱流束,超音波画像診断装置Evaluation of cooling forearm skin temperature with a cooling pad to reduce pain in the needle insertion for hemodialysis
Author(s)
Kiyoshi Naemura1
Affiliation
- Department of Clinical Engineering, School of Health Sciences, Tokyo University of Technology
Abstract
In order to reduce the pain of needle insertion for hemodialysis patients, a regional cooling pad was designed and evaluated on both a polyethylene plate and the forearms of healthy subjects (n=8). The cooling pad was fabricated with a cotton sheet and urea particles of less than 1 mm in diameter, or urea powder. Water to dissolve the urea in a heat absorption reaction was added at constant rate of 0.5 mL/s using a linear actuator. The subcutaneous tissue thickness of the healthy subjects was measured by echography. The time required to reach a skin temperature of 25 degrees Celsius (t25) and the period during which the skin had a temperature under 25 degrees Celsius (T) were compared. The t25 of the pad with urea particles was 17 seconds, and that of the pad with urea powder was 7 seconds. T was more than 390 seconds. Temperature gradients calculated with subcutaneous tissue thickness showed a positive correlation with heat flux. Initial skin temperature showed a negative correlation with T.Keyword
hemodialysis, cooling, heat flux, echography英語論文
A pilot epidemiological study on chronic dehydration of older adults in home care setting(在宅療養高齢者の慢性高張性脱水に関する予備的疫学調査)
在宅療養高齢者の慢性高張性脱水に関する予備的疫学調査
著者
東村 志保1 玉井 奈緒1, 2 仲上 豪二朗1, 3 戸部 浩美1 真田 弘美1, 3
所属
- 東京大学大学院医学系研究科附属グローバルナーシングリサーチセンター
- 東京大学大学院医学系研究科社会連携講座イメージング看護学
- 東京大学大学院医学系研究科健康科学・看護学専攻老年看護学/創傷看護学分野
要旨
高張性脱水は水分や塩分の喪失で生じる血清浸透圧の上昇である.高齢者は脱水に陥りやすいが,地域における有病率の報告は少ない.本研究は在宅療養高齢者における高張性脱水の有病率を明らかにすることを目的とした.方法:在宅療養高齢者33人を対象に横断的観察研究を行い,基本属性のほか,認知機能や血液データなどを調査した.結果:研究対象者は84±6歳で,72.7%が女性だった.血清浸透圧は22人(66.7%)が291mOsm/L以上であり,急性脱水のエピソードはなかった.脱水の有無に対する症状の感度と特異度は,77.3%と18.2%であった.認知機能は血清浸透圧と逆相関し,水分摂取量は要介護度で異なっていた.結論:在宅療養高齢者における高張性脱水の高い有病率が明らかになり,慢性脱水の存在が示唆された.認知機能や身体機能が比較的保たれた高齢者では,脱水のリスクが看過される可能性が考えられた.キーメッセージ
- 今回の研究は看護・介護のどのような問題をテーマにしているのか?
脱水というと暑熱環境下での急激な水分の喪失や熱中症が想起されるが,高齢者では寒冷期においても知らぬ間に症状もなく陥る慢性脱水が蔓延しているといわれており,今後の看護理工学的取り組みが期待される.本研究はそうした慢性脱水への取り組みの基盤を形成するものである. - この研究が看護・介護にどのように貢献できるのか?あるいは,将来的に貢献できることは何か?
本研究から,秋季でも在宅療養高齢者の約6割が慢性脱水あるいはそのリスク状態にあることが明らかにされ,早急な取り組みの必要性が示された. - 今後どのような技術が必要になるのか?
身体症状に乏しい慢性脱水の早期同定方法の開発が喫緊の課題である.また,急性脱水とは異なる慢性脱水の病態解明も望まれる.
キーワード
血清浸透圧,在宅高齢者,認知機能障害,慢性脱水A pilot epidemiological study on chronic dehydration of older adults in home care setting
Author(s)
Shiho Higashimura1 Nao Tamai1, 2 Gojiro Nakagami1, 3 Hiromi Tobe1 Hiromi Sanada1, 3
Affiliation
- Global Nursing Research Center, Graduate School of Medicine, The University of Tokyo
- Department of Imaging Nursing Science, Graduate School of Medicine, The University of Tokyo
- Department of Gerontological Nursing/Wound Care Management, Graduate School of Medicine, The University of Tokyo
Abstract
Background: Dehydration is caused by water and salt loss in the body, resulting in elevated serum osmolality (SOsm). Older adults are susceptible to dehydration because of age-related alterations, however, the prevalence is not well documented in community. This study aimed to investigate the prevalence of dehydration among older adults in a home care setting in Japan. Methods: A cross-sectional observational study was conducted in 33 older adults. Age, sex, Nursing Need Level, cognitive function, water intake, body mass index, vital signs, dehydration signs/symptoms and a blood test result were obtained. SOsm was used to identify dehydration (291≦SOsm<300 mOsm/L: Impending dehydration, 300≦SOsm: Dehydration). Results: The mean participant age was 84±6 years old, with 24 women (72.7%). Twenty-two participants (66.7%) had SOsm of 291 mOsm/L or more and no acute episodes of dehydration. Sensitivity and specificity of the signs and symptoms was 77.3% and 18.2%, respectively. Cognitive function was inversely correlated with SOsm and water intake was varied between the Nursing Need Levels. Conclusions: There was a high prevalence of dehydration among the older adults in home care setting. The dehydrated condition might have been proceeding chronically. The risk of dehydration could be overlooked in the persons with comparatively better cognitive and physical functions in the home care setting.Keyword
cognitive impairment, community-dwelling older adults, dehydration, serum osmolality英語論文
Reducing effects of dressing materials on pressure and shear force for preventing heel pressure injury: An experimental study using three-axis tactile sensor(踵部褥瘡予防におけるドレッシング材の圧力およびせん断応力の低減効果:3軸触覚センサーを用いた実験的研究)
踵部褥瘡予防におけるドレッシング材の圧力およびせん断応力の低減効果:3軸触覚センサーを用いた実験的研究
著者
光田 益士1 室岡 陽子2 相馬 紳吾3 小野 大4 須釜 淳子1 根本 秀美3
所属
- 藤田医科大学保健衛生学部社会実装看護創成研究センター
- 東京慈恵会医科大学医学部看護学科
- アルケア株式会社マーケティング部
- アルケア株式会社医工学研究所
要旨
本研究では3種類のドレッシング材を用いた頭側挙上での踵部の圧力およびせん断応力の軽減効果を比較した.合計26名の健常ボランティアが本研究に参加した.3軸触覚センサーを踵に直接貼り付けたあと,フィルムドレッシング,低摩擦外層ハイドロコロイドドレッシング(LFHドレッシング),および多層シリコーンフォームドレッシング(MSFドレッシング)で覆った.頭側挙上の角度0度,30度,45度,および60度において,センサーによる圧力とせん断応力を計測した.LFHおよびMSFドレッシングは頭側挙上の各角度において,圧力とせん断応力は同等であったが,フィルムドレッシングでは高かった(p<0.05).圧力に対する垂直せん断応力の相対値は,フィルムドレッシングは1.7であるのに対し,LFHおよびMSFドレッシングでは1.0であった.LFHおよびMSFドレッシングはフィルムドレッシングと比較して頭側挙上時の圧力およびせん断応力を軽減し,踵部褥瘡の予防に利用可能と考えられた.キーメッセージ
- 今回の研究は看護・介護のどのような問題をテーマにしているのか?
多くの症例で褥瘡は予防可能であるにもかかわらず,褥瘡発生による多くの身体的・精神的負担がいまだに存在している. - 研究を行うきっかけとなったことはどのようなことか?
踵への予防的ドレッシング材の使用は有用であるが,力(圧力,摩擦力,ずれ力)の低減に関する評価系は十分報告されていない. - この研究成果が看護・介護にどのように貢献できるのか?
本研究成果は,頭側挙上時に踵に発生する力の定量化と褥瘡予防のケア手法の確立に貢献できる. - 将来的に貢献できることは何か?
基礎研究において,今後は力の方向性や大きさをより詳細に定量化・可視化する技術開発が求められる. - 今後どのような技術が必要になるのか?
臨床研究において,今後は踵の褥瘡予防に関する適切な予防的ドレッシング材の選択と使用方法の確立が求められる.
キーワード
圧力,せん断応力,センサー,踵部褥瘡,予防Reducing effects of dressing materials on pressure and shear force for preventing heel pressure injury: An experimental study using three-axis tactile sensor
Author(s)
Masushi Kohta1 Yoko Murooka2 Shingo Soma3 Dai Ono4 Junko Sugama1 Hidemi Nemoto3
Affiliation
- Research Center for Implementation Nursing Science Initiative, School of Health Sciences, Fujita Health University
- School of Nursing, The Jikei University School of Medicine
- Department of Marketing, ALCARE Co., Ltd.
- Medical Engineering Laboratory, ALCARE Co., Ltd.
Abstract
This study aimed to compare the effect of three types of dressings on enhancing heel pressure and shear force reduction at elevating head-of-bed angles at a spine position. A total of 26 healthy volunteers participated. A three-axis tactile sensor was directly applied on the interface of the heel and then covered with the following three dressings: film dressing (as a control), low frictional outer layered hydrocolloid dressing (LFH dressing), and multilayered silicone foam dressing (MSF dressing). The interface pressure and shear force were measured by the sensor at 0, 30, 45, and 60 degrees of the elevated head-of-bed angle. The pressure and shear force in all axis directions in the LFH dressing was equivalent compared with those in the MSF dressing, while those in the film dressing reached to be higher (p<0.05). The relative value of vertical shear force to pressure for the LFH and MSF dressings was approximately 1.0, while that in the film dressing was 1.7. In conclusion, the LFH and MSF dressings reduced pressure and shear forces at head-of-bed elevation, compared with the film dressing, and were considered available for preventing heel pressure injury.Keyword
pressure, shear force, sensor, heel pressure injury, prevention英語論文
Pilot study of a prototype for visualizing veins using near-infrared light to improve peripheral intravenous access capabilities(近赤外光を使用した末梢静脈可視化試作機の予備的性能評価)
近赤外光を使用した末梢静脈可視化試作機の予備的性能評価
著者
木森 佳子1 古市 佑哉2 石本 佑3 久保 守4 佐藤 賢二5
所属
- 石川県立看護大学基礎看護学講座
- 富士通株式会社ソーシャルデザイン事業本部
- 金沢大学理工学域
- 金沢大学理工研究域フロンティア工学系
- 金沢大学理工研究域生命理工学系
要旨
本研究の目的は,末梢静脈可視化装置の操作性能と可視化性能を,近赤外光の反射光を使用したPCタブレットモニターディスプレイタイプの試作機で評価することである.試作機の操作性能は,看護師が試作機を用いた模擬的な静脈穿刺の実施後に行った半構造化面接の内容を分析し,評価した.静脈可視化性能は,目視困難な静脈28本に試作機を用い,タブレットモニターの静脈画像で主観的に静脈目視の可否を判断した.試作機の操作性能は,モニターの静脈画像を観察しながら,実際の前腕部で穿刺部位を選択するのに時間がかかる【穿刺部位の選択】が問題だった.目視困難静脈28本を試作機で撮影した静脈画像のうち,可視化静脈は12本で可視化率は42.9%だった.非可視化静脈の平均深度は3.8mm(±1.6mm),可視化静脈は2.5mm(±0.9mm)で,非可視化静脈のほうが深く(p<0.001),そのカットオフ値は3.0mm-3.3mmだった(AUC=0.987,p=0.040).試作機は,深度3.0mm以上の静脈を可視化する改善が必要である.キーメッセージ
- この研究成果が看護・介護にどのように貢献できるのか?あるいは,将来的に貢献できることは何か?
現在の静脈穿刺技術を妨げず,ベッドサイドで容易に使える装置と静脈画像の画質の進展に貢献できる. - 今後どのような技術が必要になるのか?
機器の操作性には穿刺部位を選択する静脈画像の画質を向上させる技術が必要である.
キーワード
末梢静脈穿刺,目視困難静脈,近赤外光,可視化技術,静脈画像Pilot study of a prototype for visualizing veins using near-infrared light to improve peripheral intravenous access capabilities
Author(s)
Keiko Kimori1 Yuya Furuichi2 Yu Ishimoto3 Mamoru Kubo4 Kenji Satou5
Affiliation
- Department of Fundamental Nursing, Ishikawa Prefectural Nursing University
- Social Design, Fujitsu Limited
- College of Science and Engineering, Kanazawa University
- Faculty of Frontier Engineering, Institute of Science and Engineering, Kanazawa University
- Faculty of Biological Science and Technology, Institute of Science and Engineering, Kanazawa University
Abstract
This pilot study evaluated the operability and visualization capabilities of a prototype that uses near-infrared light reflection to visualize peripheral veins. Nurses evaluated the prototypes to perform peripheral venous access using a covered needle. We investigated 28 invisible veins in healthy volunteers, and the diameters and depths of the veins were measured using ultrasound. Qualitative operability data were obtained from interviews. Quantitative visualization capability data regarding the near-infrared light vascular images produced by the prototype were collected using the Likert scale. We obtained two results: 1) According to the interviewed nurses, the prototype with a personal tablet display near a participant’s arm was easier to operate for the simulation of a blood sampling, and 2) the successful visualization rate for invisible veins using the prototype with the tablet display was 42.9%. The nonvisualized veins were deeper than the visualized veins. The vein depth cut-off ranged from 3.0 to 3.3 mm for nonvisualized and visualized veins (AUC=0.987). Our results indicate that the vein visualization device needs to be developed based on a tablet display type located near a participant’s arm, and it is necessary to visualize invisible veins with a depth of 3 mm or more.Keyword
venipuncture, invisible vein, near-infrared light, visualization, vascular image微酸性電解水の線維芽細胞に対する細胞障害性の評価
微酸性電解水の線維芽細胞に対する細胞障害性の評価
著者
矢野 博之1, 2 矢野 真美3 樋口 幸4 濱中 良志5
所属
- 大分大学全学研究推進機構
- 純真学園大学保健医療学部放射線技術科学科
- 大分大学医学部マトリックス医学講座
- 大分県立看護科学大学助産学研究室
- 大分県立看護科学大学生体科学研究室
要旨
微酸性電解水は,薄い塩酸を電気分解して得られたpH5.0~6.5の電解水で,食材の洗浄や皮膚への消毒剤として使用されている.しかしながら,現在,皮膚への消毒剤として使用されている塩素濃度(10~30ppm)の微酸性電解水では,病原菌である結核菌などの細菌は完全には死滅しない.今回,塩素濃度0,25,50,75,100ppmの微酸性電解水で作成した培地で3時間哺乳類の線維芽細胞を培養し,クリスタルバイオレット染色で接着能を,トリパンブルー染色で生存能を検討した.その結果,塩素濃度0ppmのコントロール群と比較して,塩素濃度25~75ppmの培地では,接着能77~96%および生存率50~56%と細胞への影響は軽度であった.塩素濃度100ppmの培地では,接着能61%であった一方,生存率が13%と大きく減少し,細胞に対する深刻なダメージが認められた.以上より,塩素濃度75ppmまでの微酸性電解水であれば,微酸性電解水による皮膚への影響は少ないことが示唆される.キーメッセージ
- 今回の研究は看護・介護のどのような問題をテーマにしているのか?研究を行うきっかけとなったことはどのようなことか?
微酸性電解水は,食材の洗浄や皮膚への消毒剤として使用されている一方,表皮組織の連続性が失われた荒れた皮膚に対しての影響はまだ分かっていない. - この研究成果が看護・介護にどのように貢献できるのか?あるいは,将来的に貢献できることは何か?
マウス線維芽細胞を用いて,真皮における微酸性電解水による影響は少ないことを示したことで,消毒剤の選択に参考になると考えられる. - 今後どのような技術が必要になるのか?
マウスなどの実験動物を用いて,より生体に近い実験モデルで微酸性電解水の有効性について検討する必要がある.
キーワード
微酸性電解水,皮膚消毒,線維芽細胞The effect of slightly acidic electrolyzed water on mammalian fibroblast
Author(s)
Hiroyuki Yano1, 2 Mami Yano3 Sachi Higuchi4 Ryoji Hamanaka5
Affiliation
- Research Promotion Institute, Oita University
- Department of Radiological Science, Faculty of Health Sciences, Junshin Gakuen University
- Department of Matrix Biology and Medicine, Faculty of Medicine, Oita University
- Department of Midwifery, Oita University of Nursing and Health Sciences
- Department of Human Sciences, Oita University of Nursing and Health Sciences
Abstract
Slightly acidic electrolyzed water (SAEW) with pH 5.0-6.5, which is produced by electrolyzing diluted hydrochloric acid, has been used as both a sanitizer against foodborne pathogens on fresh foods and a skin disinfectant. However, with the chloride concentration available at present (10-30 ppm), SAEW has been reported to be unable to eliminate Mycobacterium tuberculosis, the causative agent of tuberculosis. In the present study, we investigated damage in mammalian cells after incubation with a medium containing SAEW with various chloride concentrations (0, 25, 50, 75, and 100 ppm) using crystal violet or trypan blue staining. Only slight damage to mammalian cells was observed with chloride concentrations of 25-75 ppm, but with a concentration of 100 ppm, severe damage was seen. Taken together, these findings suggest that SAEW has a small effect on the skin at chloride concentrations up to 75 ppm.Keyword
slightly acidic electrolyzed water,skin disinfectant,fibroblast英語論文
Assessment of circadian patterns in salivary cortisol and chromogranin A levels in intensive care unit nurses during working and non-working days(集中治療室に勤務する看護師の勤務日と休日における唾液コルチゾールおよび唾液クロモグラニンの概日パターンに関する検証)
集中治療室に勤務する看護師の勤務日と休日における唾液コルチゾールおよび唾液クロモグラニンの概日パターンに関する検証
著者
Hansani Madushika Abeywickrama1 奥田 明子1 堀 夏恵2 横野 知江1 内山 美枝子1
所属
- 新潟大学大学院保健学研究科
- 新潟大学医歯学総合病院看護部
要旨
本研究では看護職のなかでも特にストレスフルな勤務体制に従事している集中治療室勤務の看護師の勤務日と休日でストレスに変動があるのかを,唾液コルチゾールと唾液クロモグラニンA(CgA)の概日パターンから検証した.方法:集中治療室勤務の看護師を対象とし,勤務日(以下,WD)と休日(以下,NWD)に1日4回唾液を採取した.分析は唾液コルチゾールおよびCgA濃度のパターン比較と主観ストレスとの相関を行った.結果:対象は29名.主観ストレスは,WDで高く,特に勤務中に高値であった.唾液コルチゾールは,WD,NWDともに概日パターンを反映し,有意な差はなかった.CgAは,WDとNWDにおいて異なる概日パターンがみられた.主観ストレスと唾液コルチゾールとCgAの相関はなかった.結論:唾液コルチゾールとCgAの概日リズムは勤務日と休日との差および主観ストレスとの関連はみられなかった.ただし,CgAの概日リズムに変化があった場合もあり,さらなる検証が必要である.キーメッセージ
- 今回の研究は看護・介護のどのような問題をテーマにしているのか?研究を行うきっかけとなったことはどのようなことか?
昼夜を問わず緊急的な対応を迫られる集中治療室に勤務する看護師の生体リズムも一般的な変動に従い調整されているのか. - この研究成果が看護・介護にどのように貢献できるのか?あるいは,将来的に貢献できることは何か?
緊急・救急状況に対応する看護師らの生体状態の可視化につながり,セルフケアなどの方策を検討する基礎的データとなりうる. - 今後どのような技術が必要になるのか?
唾液でのホルモン測定は簡便といえるが,解析に時間を要する.リアルタイムで反応がみえる技術があればストレスフルな職種の職務管理につながるといえる.
キーワード
唾液コルチゾール,唾液クロモグラニンA,集中治療室,看護師,概日リズムAssessment of circadian patterns in salivary cortisol and chromogranin A levels in intensive care unit nurses during working and non-working days
Author(s)
Hansani Madushika Abeywickrama1 Akiko Okuda1 Natsue Hori2 Tomoe Yokono1 Mieko Uchiyama1
Affiliation
- Graduate School of Health Sciences, Niigata University
- Nursing Department, Niigata University Medical and Dental Hospital
Abstract
In this study, we examined the circadian rhythms of cortisol and chromogranin A (CgA) in intensive care unit (ICU) nurses to clarify whether they are able to relieve stress sufficiently on rest days. Method: The saliva samples were collected by 29 ICU nurses at 08:00, 12:00, 16:00, and 20:00 on a working day (WD) and a non-working day (NWD) and analyzed for cortisol and CgA levels. Results: The participants were between 20〓50 years old (female: 26, male: 3). The subjective stress was high among the majority of the participants in WD, especially during working hours (12:00 and 16:00). Salivary cortisol levels on WD and NWD reflected the diurnal pattern with no significant differences. The circadian pattern of salivary CgA on WD was different from that of NWD, even though it was not statistically significant. The intensity of subjective stress did not have a relationship with either salivary cortisol or CgA levels. Conclusions: Neither the work status nor the subjective stress significantly changed the diurnal salivary cortisol pattern. The non-significant differences in circadian patterns of sCgA levels between WD and NWD might be associated with job strain. The results indicate inadequate stress relief in NWD among ICU nurses.Keyword
cortisol, chromogranin A, intensive care unit, nurse, circadian rhythm英語論文
Examining the effectiveness of heat retention after foot baths for young women with coldness(冷えを呈する若年女性に対する足浴後の保温の有効性の検証)
冷えを呈する若年女性に対する足浴後の保温の有効性の検証
著者
船藤 万誉1 鏡(関塚)真美2 毎田 佳子2 根本 鉄2
所属
- 金沢大学大学院医薬保健学総合研究科博士前期課程修了生
- 金沢大学医薬保健研究域保健学系
要旨
本研究の目的は冷えを呈する女性に対する足浴後の保温(足先からひざ下までの筒状カバーの着用)の有効性を検証することである.【方法】2018年7月から10月の期間に若年女性24名を対象とした.実験方法は,安静座位後に足浴を20分間(水温40℃,水深20cm)実施し,その後20分後まで下腿,手掌,前額の深部温を持続的にモニタリングした.足浴後保温を行う場合と,行わない場合の実験を2日間に分けて実施した.前額と下腿・足背の深部温較差の特徴により冷えを4パターンに分類した.【結果】前額と下腿および足背の深部温較差が大きい者は,足浴後保温しない場合,安静時と足浴20分後の下腿深部温に有意差を認めなかった(p=0.051)が,足浴後保温した場合,下腿深部温が有意に上昇した(p=0.012).【結論】冷えを呈する女性に対して,足浴後保温することは体温の維持につながる有効な方法であることが示唆された.キーメッセージ
- 今回の研究は看護・介護のどのような問題をテーマにしているのか?研究を行うきっかけとなったことはどのようなことか?
冷えを呈する女性に対してさまざまなケアの試みがされているが,足浴後の保温の有効性を検証した研究はなかったため,足浴後の保温の有無でその有効性を検証した. - この研究成果が看護・介護にどのように貢献できるのか?あるいは,将来的に貢献できることは何か?
将来子どもを産み育てる可能性のある若年女性が自らの冷えに気づき,セルフケアを行うことで,周産期のウエルネス向上に貢献できると考える. - 今後どのような技術が必要になるのか?
若年女性が自らの冷えに気づくことができ,セルフケアの効果が可視化できる簡便なアプリケーションの開発が期待される.
キーワード
若年女性,冷え,深部体温,足浴,保温Examining the effectiveness of heat retention after foot baths for young women with coldness
Author(s)
Maho Funato1 Naomi Sekizuka-Kagami2 Yoshiko Maida2 Tetsu Nemoto2
Affiliation
- Completed the Master’s Program, Graduate School of Medical, Pharmaceutical and Health Sciences, Kanazawa University
- Faculty of Health Sciences, Institute of Medical, Pharmaceutical and Health Sciences, Kanazawa University
Abstract
We verified the effectiveness of heat retention after foot baths for women with a large temperature difference between central and peripheral areas. Twenty-four young women were recruited between July and October 2018. The experimental method involved performing foot baths for 20 minutes after which the participants sat in a resting position. The deep body temperature of the participants was continuously monitored for 20 minutes after the experiment. Post-foot bath experiments were conducted with and without heat retention (i.e., the use of tubular covers for lower legs) for two consecutive days. Coldness was classified into four types based on the deep temperature difference between the forehead and the lower leg or instep of the foot. Among participants who showed a large difference in deep temperature between the forehead and the lower leg as well as the instep, there was no significant difference between the deep temperature of the lower leg at rest and 20 minutes after the foot bath without heat retention (p=0.051). Temperature increased significantly with heat retention (p=0.012). We suggest that heat retention after foot bath is an effective method to maintain the temperature for women with coldness.Keyword
young women, coldness, deep body temperature, foot bath, heat retention英語論文
Effects of lower leg exercising in young women with coldness: A preliminary study(冷えを呈する若年女性に対する下腿運動の効果の検討)
冷えを呈する若年女性に対する足浴後の保温の有効性の検証
著者
加島 江莉1 鏡 真美2 毎田 佳子2 根本 鉄2
所属
- 金沢大学大学院医薬保健学総合研究科博士前期課程修了生
- 金沢大学医薬保健研究域保健学系
要旨
本研究は下腿運動を行ったあとの主観的評価と深部温の変化により,下腿運動の効果を明らかにすることを目的とした.【方法】研究期間は2020年3月から11月で,健康な女性17名(平均年齢22.8歳)を対象とした.実験期間は7日間で,対象者は独自の運動装置を用いた下腿運動を行った.前額と足背の深部温較差2.55℃を基準に,対象者を冷えグループと非冷えグループの2群に分類した.1週間の運動効果を主観的評価と深部温の変化で評価した.深部温の変化は一般化線形混合モデルを用いて分析した.【結果】下腿運動後の足背深部温は冷え群で有意に上昇し,運動後の前額と足背の深部温較差も冷え群で有意に縮小した.また,グループ問わず対象者全員が運動により「足が温まった」と評価した.【結論】本研究結果は,冷えを呈する若年女性の足背の血流改善に下腿運動が効果的である可能性を示唆したものである.キーメッセージ
- 今回の研究は看護・介護のどのような問題をテーマにしているのか?研究を行うきっかけとなったことはどのようなことか?
若年女性に対する冷え改善のためのセルフケアをテーマとした研究であり,下肢末梢の血流循環改善を期待して「下腿運動」を考案した. - この研究成果が看護・介護にどのように貢献できるのか?あるいは,将来的に貢献できることは何か?
将来,妊娠し出産する可能性のある若年女性が,自分自身の冷えに対してセルフケアを継続して行うことで,周産期のウエルネス向上に貢献できると考える. - 今後どのような技術が必要になるのか?
冷えを呈する若年女性が,日常生活のなかで,気軽かつ簡便に下腿運動が実施できる小型装置の開発とその効果をリアルタイムに確認できるようなアプリケーションの開発が期待される.
キーワード
若年女性,冷えの自覚,冷え,深部温,下腿運動Effects of lower leg exercising in young women with coldness: A preliminary study
Author(s)
Eri Kashima1 Naomi Sekizuka-Kagami2 Yoshiko Maida2 Tetsu Nemoto2
Affiliation
- Completed the Master’s Program, Graduate School of Medical, Pharmaceutical and Health Sciences, Kanazawa University
- Faculty of Health Sciences, Institute of Medical, Pharmaceutical and Health Sciences, Kanazawa University
Abstract
The purpose of this study was to clarify the effects of lower leg exercise by subjective evaluation and changes in deep body temperature. Methods: This study was conducted from March to November 2020 and enrolled 17 healthy women (mean age 22.8 years). The study period was 7 days. Lower leg exercise was performed using an original exercise device. Participants were divided into two the coldness and non-coldness groups according to reference of a deep body temperature difference of 2.55℃ between the forehead and instep. We performed the subjective assessment of effects of exercise during a one-week period and evaluated the resulting changes in deep body temperature. A generalized linear mixed model was used to analyse the changes in deep body temperature. Results: Post-exercise, deep body temperature in the instep significantly increased in the coldness group. The difference in deep body temperature following the leg exercise between the forehead and instep significantly decreased in the coldness group. With regards subjective evaluation, all participants reported that their feet were warm after lower leg exercise, irrespective of the group. Conclusion: This study indicates that lower leg exercise may be effective in improving blood flow in the instep of young women with coldness.Keyword
young women, cold sensation, coldness, deep body temperature, lower leg exercise英語論文
Development of a method using transperineal ultrasound movies for automatic evaluation of the contraction of pelvic floor muscles in men after radical prostatectomy(前立腺全摘除術後の経会陰超音波動画像を用いて骨盤底筋の収縮を自動評価する手法の開発)
前立腺全摘除術後の経会陰超音波動画像を用いて骨盤底筋の収縮を自動評価する手法の開発
著者
齋藤 遥奈1 カハアルダニエル2 桑名 健太2 松永 明子3 川尻 舞衣子4 武石 陽子4 中村 康香4 吉沢 豊予子4 吉田 美香子4
所属
- 東北大学医学部保健学科看護学専攻
- 東京電機大学工学部先端機械工学科
- 東京大学医学部附属病院リハビリテーション部
- 東北大学大学院医学系研究科ウィメンズヘルス・周産期看護学分野
要旨
本研究は,ロボット支援根治的前立腺全摘除術後の男性患者の経会陰超音波動画を用いて,自動的に計測し骨盤底筋の収縮を評価する手法を開発した.方法:先行研究で使用した40枚の動画像を使用した.エキスパート2名のディスカッションと観察点の追跡容易性から恥骨と直腸肛門角の距離を指標として定めた.経会陰超音波の動画像4枚を用いて7つの追跡手法を検討した.動画像40枚の恥骨-直腸肛門角距離を計測し,専門家が主観的に評価した2つのレベル(よく動く/中程度)でその値を比較した.結果:7つの追跡手法のうち,Kernelized Correlation Filter(KCF)は,4本の動画において安静時から収縮時までの恥骨と直腸肛門角を追跡でき,フレームレートは66-77であった.KCFで計測された恥骨-直腸肛門角距離のベクトル長とX軸長の安静時から収縮時の変化率は,主観的に評価した「よく動く」と「中程度」の間で有意に異なった.結論:前立腺全摘除術後の超音波画像上の恥骨と直腸肛門角を追跡し,骨盤底筋の収縮を自動評価する手法が開発された.キーメッセージ
- 今回の研究は看護・介護のどのような問題をテーマにしているのか?研究を行うきっかけとなったことはどのようなことか?
経会陰超音波画像上での男性の骨盤底筋の収縮機能評価が,術者の主観に依存していること. - この研究成果が看護・介護にどのように貢献できるのか?あるいは,将来的に貢献できることは何か?
客観的・定量的に,男性の骨盤底筋の収縮の程度を自動に計測できるようになる.術者の経験に依存せず,正確な骨盤底筋の収縮機能評価が可能となる.骨盤底リハビリテーションの訓練効果のモニタリングなどへ応用できる. - 今後どのような技術が必要になるのか?
骨盤底筋の筋力評価には,収縮の持続力などの評価技術の開発が必要である.
キーワード
画像処理,腹圧性尿失禁,超音波検査Development of a method using transperineal ultrasound movies for automatic evaluation of the contraction of pelvic floor muscles in men after radical prostatectomy
Author(s)
Haruna Saito1 Danniyaer Kahaer2 Kenta Kuwana2 Akiko Matsunaga3 Maiko Kawajiri4 Yoko Takeishi4 Yasuka Nakamura4 Toyoko Yoshizawa4 Mikako Yoshida4
Affiliation
- Department of Nursing, Tohoku University School of Medicine, Health Sciences
- Department of Precision Machinery Engineering, School of Engineering, Tokyo Denki University
- Department of Rehabilitation Medicine, The University of Tokyo Hospital
- Department of Women’s Health Nursing & Midwifery, Tohoku University Graduate School of Medicine
Abstract
We aimed to develop a method to automatically evaluate pelvic floor muscle (PFM) contractions using transperineal ultrasound movies of male patients after radical prostatectomy. Methods: Forty transperineal ultrasound movies obtained in a previous study were used. From the discussion between two expert PFM trainers and automatic trackability, the distance from the pubis to the anorectal junction was determined to be the primary parameter. Seven algorithms were tested to track the pubis and the anorectal junction. The pubis-anorectal junction distance, measured using a software, were compared on two levels of PFM contraction (good/moderate) subjectively evaluated. Result: Among the seven algorithms, Kernelized Correlation Filter could track the pubis and the anorectal junction during PFM contraction in the 40 movies. The frame rate (fps) was 66〓77 in the Kernelized Correlation Filter. The changing rates of the pubis-anorectal junction distance in the vector and the X-axis lengths were significantly different between the good and moderate contractions that were subjectively evaluated. Conclusion: A method for tracking the pubis and the anorectal junction in ultrasound movies after radical prostatectomy was developed to automatically evaluate PFM contractions.Keyword
image processing, stress urinary incontinence, ultrasonography速報
英語論文
Relationship between Lyapunov exponent of heart rate variability, blood pressure and autonomic nervous indices(心拍変動のリアプノフ指数と血圧および自律神経指標との関係)
心拍変動のリアプノフ指数と血圧および自律神経指標との関係
著者
浅野 美礼1
所属
- 筑波大学医学医療系
要旨
30歳未満の健康な若年者と65歳以上の健康な高齢者に安静状態から起立してもらい,そのときの心電図と血圧を1kHzで測定した.心電図R-R間隔(RRI)をリサンプリングした関数よりリアプノフ指数を計算し,またアトラクターを描画して心拍変動の特徴の把握を試みた.その結果,リアプノフ指数については若年者より高齢者のほうが低かった.また,両方の年齢層で,RRIと血圧が低下するとリアプノフ指数が低下した.ただし,リアプノフ指数はRRI,血圧,既知の自律神経指標のいずれとも有意な相関がみられなかった.描画されたアトラクターについては,単純な三項間漸化式で記述される線形モデルを設定し,心拍変動の揺らぎが自己の直近2点の履歴によって決まるものと解釈した.心拍変動から得られるリアプノフ指数は,血圧や自律神経活動とは独立した,遠隔看護にも活用可能な循環動態の指標になりうると考えられた.キーメッセージ
- 今回の研究は看護・介護のどのような問題をテーマにしているのか?
研究を行うきっかけとなったことはどのようなことか?
短時間の心拍変動のモニタリングから有用な指標が得られないかと考えて発想した. - この研究成果が看護・介護にどのように貢献できるのか?あるいは,将来的に貢献できることは何か?
心電図モニタリングから刻々と変化する循環動態やストレスの変調をとらえられるようになると期待している. - 今後どのような技術が必要になるのか?
ウェアラブルデバイスでの活用に向け,脈波からR-R間隔を精密に推定できる技術が必要である.
キーワード
心電図,アトラクター,遠隔看護,高齢者Relationship between Lyapunov exponent of heart rate variability, blood pressure and autonomic nervous indices
Author(s)
Yoshihiro Asano1
Affiliation
- Faculty of Medicine, University of Tsukuba
Abstract
In this study, the Lyapunov exponent (LE) of heart rate variability (HRV) is investigated for feasibility as an index of hemodynamics. In a previous study, we calculated the HRV and evaluated blood pressure fluctuations via the autonomic nervous activity during standing. Herein, we examine the LE of HRV using resampled electrocardiogram (ECG) R-R interval (RRI) data. ECG and blood pressure measurements were obtained from healthy young (<30 years) and older (〓65 years) subjects during rest-to-stand motion experiments. The LE calculated from HRV measurements were lower in older participants than young participants. In both age groups, the LE decreased when the RRI and blood pressure decreased. However, the LE was not significantly correlated with either the RRI or blood pressure. Further, the LE was not significantly correlated with the indices of autonomic nervous system activity. Thus, the LE could be used as an independent index to monitor fluctuations in circulatory dynamics. We believe that this preliminary work will be of use in developing medical applications using the LE for telemedicine and home nursing.Keyword
electrocardiogram, attractor, telenursing, gerontology英語論文
Automated detection of infusion and catheter hub in movies of nurses’ observation scenes using deep learning(ディープラーニングによる看護師の観察場面の録画画像における輸液およびカテーテルハブの自動検出)
ディープラーニングによる看護師の観察場面の録画画像における輸液およびカテーテルハブの自動検出
著者
渡邉 亜紀子1 寺本 篤司2 廣瀬 大輔1
所属
- 藤田医科大学保健衛生学部看護学科
- 藤田医科大学医療科学部放射線学科
要旨
看護師の臨床判断能力や医療安全に関する研究に看護師の視覚情報が用いられているが,分析に必要な時間と費用が莫大であると推察される.本研究は,Mask R-CNNを用いて看護師の視野にある対象物の自動検出が可能であるか,視野解析に必要な労力と時間が軽減できるかを明らかにすることを目的とした.看護師6名の観察場面を録画した動画から,検出対象物である「輸液」789枚と「カテーテルハブ」1,136枚の静止画像を抽出しMask R-CNNの学習に用いた.それぞれの物体の検出能力は,「輸液」は検出感度が90.1%,画像1枚あたりの偽陽性数が0.109個,物体認識精度を表すDice indexが0.765,「カテーテルハブ」は,それぞれ50.8%,0.308個,0.205であった.また,2名分の画像をMask R-CNNを用いることで注視点指定作業が短縮できるか確認したところ,18.7%作業時間が短縮できた.今後,Mask R-CNNへの学習方法の検討およびデータ量を増やし検出精度の向上をめざすことが課題である.キーメッセージ
- 今回の研究は看護・介護のどのような問題をテーマにしているのか?研究を行うきっかけとなったことはどのようなことか?
看護師の臨床判断能力を効率的に評価するためにAIによる物体検出モデルを開発した. - この研究成果が看護・介護にどのように貢献できるのか?あるいは,将来的に貢献できることは何か?
物体の自動検出によりデータ解析作業の労力が低減し,看護学研究の促進に貢献できる. - 今後どのような技術が必要になるのか?
検出カテゴリーや学習データ数を増やし,検出率を向上させることが必要である.
キーワード
看護師の観察場面,ディープラーニング,自動検出,Mask R-CNNAutomated detection of infusion and catheter hub in movies of nurses’ observation scenes using deep learning
Author(s)
Akiko Watanabe1 Atsushi Teramoto2 Daisuke Hirose1
Affiliation
- Faculty of Nursing, School of Health Sciences, Fujita Health University
- Faculty of Radiological Technology, School of Medical Sciences, Fujita Health University
Abstract
In recent years, nurses’ visual information has been used in research on nurses’ clinical decision-making ability and medical safety, but it is assumed that such analyses are extremely time-consuming and expensive. This study was implemented to clarify whether Mask R-CNN (which captures image features and groups them) can automatically detect objects in nurses’ visual fields and whether it can reduce the labor and time required for visual field analysis. We collected 789 images of “infusion” and 1,136 images of a “catheter hub” from the visual field images of six nurses and used them to train Mask R-CNN. Our results showed that detection sensitivity, number of false positives per image, and Dice index (representing area coincidence) of “infusion” were 90.1%, 0.109, and 0.765, while for “catheter hub” the corresponding values were 50.8%, 0.308, and 0.205, respectively. Next, we checked whether the task of specifying the gazing point could be shortened using Mask R-CNN for the visual field images of two subjects and found that the task time could be reduced by 18.7%. In future work, we will study the method of training Mask R-CNN and aim to increase the amount of data to improve the accuracy of object detection.Keyword
nurses’ observation scenes, deep learning, automated detection, Mask R-CNN英語論文
Evaluation of liquid-less biofilm staining on wound blotting samples(ウンドブロッティングサンプルのリキッドレス・バイオフォルム染色法の評価)
ウンドブロッティングサンプルのリキッドレス・バイオフォルム染色法の評価
著者
峰松 健夫1, 2 冨田 早苗3 戸部 浩美2 Sofoklis Koudounas1, 2 仲上 豪二朗2, 3 真田 弘美2, 3
所属
- 東京大学大学院医学系研究科社会連携講座スキンケアサイエンス
- 東京大学大学院医学系研究科附属グローバルナーシングリサーチセンター
- 東京大学大学院医学系研究科健康科学看護学専攻老年看護学/創傷看護学分野
要旨
バイオフィルム感染は難治性潰瘍の主要な原因であるため,バイオフィルム検出はその予防と管理に欠かせない.私たちは簡便,迅速,安全なバイオフィルム染色法としてリキッドレス染色法を開発した.本研究は,リキッドレス法を従来法と比較し,評価するために行った.異なる濃度の人工バイオフィルムを滴下したドットブロットサンプルを準備し,リキッドレス法および従来法で染色した.リキッドレス法では,従来法にくらべて低い濃度でバイオフィルムが主観的に観察された.定量的評価では,シグナルと濃度の相関やシグナル・ノイズ比には差は認められなかったものの,リキッドレス法はシグナルの安定性で従来法より優れていた.今後,リキッドレス法は在宅医療におけるポイントオブケア・バイオフィルム検査への応用が期待される.キーメッセージ
- 今回の研究は看護・介護のどのような問題をテーマにしているのか?研究を行うきっかけとなったことはどのようなことか?
創傷治癒を阻害する目に見えないバイオフィルムの可視化を,さらに安全かつ迅速に実施するシステムの開発が望まれていた. - この研究成果が看護・介護にどのように貢献できるのか?あるいは,将来的に貢献できることは何か?
創面バイオフィルム可視化技術の普及に繋がり,難治性創傷の治癒阻害要因の同定や,創傷ケアの評価に応用されうる. - 今後どのような技術が必要になるのか?
バイオフィルムが可視化されることで初めて,バイオフィルム形成の予防法や効果的除去法など新たな技術の開発に着手することができる.
キーワード
難治性潰瘍,臨界的定着,バイオフィルム,ウンドブロッティング,褥瘡アセスメントEvaluation of liquid-less biofilm staining on wound blotting samples
Author(s)
Takeo Minematsu1, 2 Sanai Tomida3 Hiromi Tobe2 Sofoklis Koudounas1, 2 Gojiro Nakagami2, 3 Hiromi Sanada2, 3
Affiliation
- Department of Skincare Science, Graduate School of Medicine, The University of Tokyo
- Global Nursing Research Center, Graduate School of Medicine, The University of Tokyo
- Department of Gerontological Nursing/Wound Care Management, Graduate School of Medicine, The University of Tokyo
Abstract
Because biofilm infection is a major cause of hard-to-heal wounds, biofilm detection is essential for prevention and management of hard-to-heal wounds. We newly developed a simple, rapid, and safe staining method of biofilms, liquid-less staining. In this study, we evaluated the liquid-less staining in comparison with the conventional method. We prepared dot blot samples of different concentration of artificial biofilms, and stained with the conventional and liquid-less staining. The liquid-less method detected the signals of lower concentration of biofilms than the conventional method in subjective evaluation. Although the quantitative evaluation showed similar signal-noise ratio and correlation between signal intensity and the concentration of biofilms, the liquid-less method was superior to the conventional method in signal stability. The liquid-less staining method is expected to be applied for the point-of-care biofilm testing in home care settings.Keyword
hard-to-heal wound, critical colonization, biofilm, wound blotting, wound assessment健常成人を対象にした手浴とストレッチプログラムの冷え症改善効果の自律神経機能評価
健常成人を対象にした手浴とストレッチプログラムの冷え症改善効果の自律神経機能評価
著者
関谷 まり1, 2 村松 歩3 山本 祐輔1 原地 絢斗3 辻下 守弘4 水野(松本)由子1, 3
所属
- 兵庫県立大学大学院応用情報科学研究科
- 大手前大学国際看護学部
- 兵庫県立大学大学院情報科学研究科
- 奈良学園大学保健医療学部
要旨
健常成人の冷え症改善に対し皮膚表面温度と指尖容積脈波を用いてストレッチの有用性を検討した.健常成人31名(平均年齢22.05±2.6歳)を上肢筋肉量の上位群(16名)と上肢筋肉量の下位群(15名)の2群に分けた.実験1は,手浴後の効果を見るために,2回の手浴を実施した.実験2は,ストレッチと手浴後の効果を見るために,1回の手浴と,ストレッチをして手浴を実施した.実験1と実験2において,手浴後にそれぞれ10分間脈波振幅値と皮膚表面温度を測定し,各群で比較した.上位群では,脈波振幅値と皮膚表面温度は,両方の実験で,安静時と比較して変化はなかった.下位群では,実験2の安静時,手浴後,ストレッチをして手浴後の脈波振幅値が上位群と比較して,有意に高値を示した.また,実験2の皮膚表面温度は,0分後,2分後,4分後,6分後で上位群と比較して有意に高値を示した.ストレッチは,下位群において,冷え症改善の効果があることが示唆された.キーメッセージ
- 今回の研究は看護・介護のどのような問題をテーマにしているのか?研究を行うきっかけとなったことはどのようなことか?
研究を行うきっかけとなったことはどのようなことか?冷え症は,体調不良の誘因となることに着眼し,セルフケアにより予防できると考えた. - この研究成果が看護・介護にどのように貢献できるのか?あるいは,将来的に貢献できることは何か?
冷え症の軽減により,若年者の健康保持増進や,高齢者のフレイル予防に貢献できる. - 今後どのような技術が必要になるのか?
簡便な保温方法や,取り組みやすいストレッチ方法の改善が必要である.
キーワード
健常成人,手浴,ストレッチ,冷え症改善Evaluation of the cold sensitivity improvement effect on the functioning of healthy adults
Author(s)
Mari Sekiya1, 2 Ayumi Muramatsu3 Yusuke Yamamoto1 Kento Harachi3 Morihiro Tsujisita4 Yuko Mizuno-Matsumoto1, 3
Affiliation
- Graduate School of Applied Information Science, University of Hyogo
- Otemae University Faculty of Global Nursing
- Graduate School of Information Science, University of Hyogo
- Nara Gakuen University Faculty of Health and Medical Sciences
Abstract
The usefulness of stretching to improve cold sensitivity in healthy adults was investigated using skin surface temperature and finger plethysmography. Thirty-one healthy adults in the age group of 20〓25 years were divided into two groups: high upper-limb muscle mass group and low upper-limb muscle mass group. In experiment one, two rounds of hand bath were performed. In experiment two, one round of hand bath and one round of stretching followed by hand bath were performed. In both experiments, pulse wave amplitude and skin surface temperature were measured for ten minutes after hand bath and the temperatures of both the groups were compared. For the high group, the pulse wave amplitude and skin surface temperature did not change in both the experiments compared to the resting state. In experiment two, the pulse wave amplitude at rest, after the hand bath and after stretching and hand bath, were significantly higher for the low group than that of the high group. Moreover, the skin surface temperature in experiment two was significantly higher than in experiment one after zero, two, four, and six minutes. Therefore, stretching has improved the cold sensitivity for the low muscle mass group.Keyword
healthy adults, hand bathing, stretching, improvement in coldness実践報告
体圧分散マットレスの圧再分配機能評価法の開発
体圧分散マットレスの圧再分配機能評価法の開発:ウレタンフォームマットレスの変形を可視化する磁気共鳴画像撮像法の検討
著者
熊谷 あゆ美1 大野 直樹2 須釜 淳子3
所属
- 福井県立大学看護福祉学部看護学科
- 金沢大学医薬保健研究域保健学系
- 藤田医科大学保健衛生学部社会実装看護創成研究センター
要旨
腹臥位手術中の褥瘡予防としてウレタンフォームマットレスを使用する.この圧再分配機能にはマットレスの沈み込みが影響するが,腹臥位中の腸骨部の皮膚の沈み込みについて明らかにした報告はない.研究者らは腹臥位で使用中のマットレスの変形具合を磁気共鳴画像で可視化することを着想した.しかし,磁気共鳴画像はその撮像原理から生体の撮像はできるが,マットレスを撮像することはできない.そのため,新たにマットレスの体圧分散効果に影響なく撮像できる方法を考案した.その結果,10mMの造影剤を注入した内径6mmの耐油ビニールチューブをマットレスの4辺に固定することにより,マットレスの形状を点で確認することができた.また,マットレスの変形を撮像することができた.今後,本手法を用いて褥瘡予防に有効なマットレスの硬さを明らかにできることが期待される.キーメッセージ
- 今回の研究は看護・介護のどのような問題をテーマにしているのか?
研究を行うきっかけとなったことはどのようなことか?
病棟とくらべて手術室の褥瘡発生率は高い.そのため,褥瘡予防に有効な体圧分散マットレスの検討が必要と考えた. - この研究成果が看護・介護にどのように貢献できるのか?あるいは,将来的に貢献できることは何か?
マットレスの変形の可視化により,褥瘡予防に有効なマットレスの硬さを明らかにすることができる. - 今後どのような技術が必要になるのか?
マットレスの変形から,体圧分布を推測できるような技術が必要になる.
Ayumi Kumagai 1 Naoki Ohno 2 Junko Sugama 3 Faculty of Nursing and Social Welfare Sciences, Fukui Prefectural University Faculty of Health Sciences, Institute of Medical, Pharmaceutical and Health Sciences, Kanazawa University Research Center for Implementation Nursing Science Initiative, School of Health Sciences, Fujita Health University
Author(s)
Ayumi Kumagai1 Naoki Ohno2 Junko Sugama3
Affiliation
- Faculty of Nursing and Social Welfare Sciences, Fukui Prefectural University
- Faculty of Health Sciences, Institute of Medical, Pharmaceutical and Health Sciences, Kanazawa University
- Research Center for Implementation Nursing Science Initiative, School of Health Sciences, Fujita Health University
施設入所高齢者の自立度別栄養状態の実態と舌圧・身体計測値の栄養評価指標としての活用可能性
施設入所高齢者の自立度別栄養状態の実態と舌圧・身体計測値の栄養評価指標としての活用可能性
著者
竹山 ゆみ子1, 2 永松 有紀3 藤内 美保4
所属
- 宮崎大学医学部看護学科
- 大分県立看護科学大学大学院博士後期課程
- 産業医科大学産業保健学部看護学科
- 大分県立看護科学大学基礎看護科学講座
要旨
介護老人保健施設(以下,老健と記す)に入所している高齢者の自立度別の栄養状態の実態を,舌圧・身体計測値から明らかにし,舌圧・身体計測値が栄養状態の客観的評価項目としての活用できるかを検証することを目的とした.【方法】老健の入所高齢者42名,平均年齢86.6(±15.47)歳を対象に,舌圧測定・身体計測を実施した.分析はSpearmanの順位相関係数,Kruskal Wallis検定,Steel Dwass検定を行った.【結果】自立度と栄養状態の関係は,要介護1が要介護4・5にくらべて,上腕筋囲長(Midarm Muscle Circumferenceama:AMC)と上腕筋面積(Midarm Muscle Area:AMA)で良好な値を示していた.また,上腕周囲長(Midarm Circumference:AC)・上腕三頭筋皮下脂肪厚(Triceps Skinfold Thickness:TSF)・下腿周囲長(Calf Circumference:CC),AMC,AMAは,血液検査値と弱い正の相関がみられた.しかし,舌圧と食事摂取量は血液検査値との関連はなかった.【結論】老健の入所高齢者は,自立度に関係なく低栄養状態リスクの可能性が高いことが示唆された.また,老健では血液検査値に代わる栄養評価指標として,AC・TSF・CC・AMC・AMAが活用できる可能性が示唆された.キーメッセージ
- 今回の研究は看護・介護のどのような問題をテーマにしているのか?
研究を行うきっかけとなったことはどのようなことか?
入所高齢者の栄養評価指標として舌圧・身体計測値はどの程度活用できるのか. - この研究成果が看護・介護にどのように貢献できるのか?あるいは,将来的に貢献できることは何か?
日常ケアのなかで活用することで,高齢者の栄養ケア・マネジメントの早期介入が行える可能性がある. - 今後どのような技術が必要になるのか?
高齢者施設に従事する職員の日常業務での活用可能性の検証と,さらに簡便な栄養評価指標の検討を行う.
Nutritional status associated with independence level of older adults in the Geriatric Health Service Facility in Japan and feasibilities of tongue pressure and physical measurement as objective nutritional indices
Author(s)
Yumiko Takeyama1, 2 Yuki Nagamatsu3 Miho Tonai4
Affiliation
- Adult-Gerontological Nursing, School of Nursing, Faculty of Medicine, University of Miyazaki
- PhD, student, Oita University of Nursing and Health Sciences
- Department of School of Health Science, University of Occupational and Environmental Health
- Clinical practicum-Fundamental Nursing, Oita University of Nursing and Health Sciences
Incidence and patient characteristics of aspiration pneumonia using a nursing screening flowchart in an acute hospital(急性期病院における看護スクリーニングフローチャートを用いた 誤嚥性肺炎の発生率と患者特性)
急性期病院における看護スクリーニングフローチャートを用いた誤嚥性肺炎の発生率と患者特性
著者
山﨑 美代1 光田 益士2 三鬼 達人1 田村 茂1 石谷 朋紀1 生駒 俊裕1 石山 友貴1 會川 美冬1 須釜 淳子2 眞野 惠好1
所属
- 藤田医科大学病院看護部
- 藤田医科大学保健衛生学部社会実装看護創成研究センター
要旨
われわれが開発した「嚥下障害と誤嚥性肺炎患者スクリーニングフローチャート(DASフローチャート)」を用いて急性期病院に入院後の誤嚥性肺炎の発生率と誤嚥性肺炎患者の特徴を調査した.2020年10月から2021年1月にかけて横断的な調査を実施した.研究期間中,入院患者10,039名のうち97名が肺炎疑いあるいは肺炎と診断された.その97名のうち,73名(75.3%)に誤嚥性肺炎を認めた.したがって,誤嚥性肺炎の発生率は0.73%であった.73名の誤嚥性肺炎患者のうち,48名(65.8%)につぎの3つの医師診断パラメータのうち少なくとも2つが認められた:体温≧37.5℃,C反応性たんぱく≧20mg/L,白血球数≧9,000/〓L.DASフローチャートは,誤嚥性肺炎の患者を特定するために使用できる可能性があるが,DASフローチャートの妥当性を検討するためのさらなる研究が必要である.キーメッセージ
- 今回の研究は看護・介護のどのような問題をテーマにしているのか?
研究を行うきっかけとなったことはどのようなことか?
誤嚥性肺炎は高齢者の死因の上位に入るにもかかわらず,定量的な診断基準の策定がむずかしい病態である.入院患者に対する誤嚥性肺炎の発生率はいまだ明確ではない. - この研究成果が看護・介護にどのように貢献できるのか?あるいは,将来的に貢献できることは何か?
本研究で開発したフローチャートを使えば,看護のリソースのみで誤嚥性肺炎患者のスクリーニングが可能となる.これまで見逃されてきたかもしれない誤嚥性肺炎の兆候を発見し,重症化する前のケア介入が期待できる. - 今後どのような技術が必要になるのか?
情報通信技術を用いた誤嚥性肺炎の早期検出システムの開発が求められる.
Incidence and patient characteristics of aspiration pneumonia using a nursing screening flowchart in an acute hospital
Author(s)
Miyo Yamasaki1 Masushi Kohta2 Tatsuto Miki1 Shigeru Tamura1 Tomonori Ishitani1 Toshihiro Ikoma1 Yuki Ishiyama1 Mifuyu Kaigawa1 Junko Sugama2 Keiko Mano1
Affiliation
- Department of Nursing, Fujita Health University Hospital
- Research Center for Implementation Nursing Science Initiative, School of Health Sciences, Fujita Health University